もめのめも書き

日常のエッセイ、仕事の記録など。

〔エッセイ〕傘を買いたい。

 傘が必要なことに気がついた。

 

田舎と街は勝手が違う。田舎は完全に車社会。対して、街はよく歩く。車移動ばかりの田舎で10年ほど生活した私は、久しぶりに街の生活に戻ってきた。天気予報を見ないで過ごし続け、どんよりとした空に雨を予感した時、私の手元にまともな傘が見当たらなかった。

 

車移動ばかりの時は、適当な長傘を車に積みっぱなしにしていた。スーパーの駐車場から店の軒先までの一瞬の活躍だから、傘のデザイン性についてなどほとんど無頓着だった。実際、実家で使われていないミッキーマウスの傘を、荷台に乱雑に積みっぱなしにしていた。

 

いい大人になって、ぼろぼろのミッキーマウスはまずい。傘を求めて街を歩いた。10年も傘の所持に無頓着だと、差すことにさえ無頓着になっている。小雨程度なら避けられそうだし、少し濡れても乾くだろうと思う。雨空の下、歩行距離が長くなれば、そうもいかない。とは言え、日本で1年のうち、雨が大量に長く降り続くことは少ないから、長傘だと多くのシーンでお荷物になる。私の頭の中に浮かんだ購入の選択肢は、折り畳みタイプしかなかった。折り畳み傘は、開くことと畳むことにそれぞれコツがいるから、小学生が使用するには難しく、長傘の選択が適当だろう。しかし私は、いい大人だ。不器用ながらも折り畳める自信がある。日常的に使用しているリュックのポケットに入るコンパクトなものを購入すると決めた。生活雑貨店に行くと、機能別にずらりと多種多様な折り畳み傘が並んでいた。晴雨兼用を見つけ、リュックに忍ばせておく理由を増やしたいので「超軽量」「晴雨兼用」を検索ワードとした。ヒットした数種類から、鮮やかな黄色の折り畳み傘を手に取った。レジに向かう途中、鏡に映る私が着ていたのは、眩しい黄色のワンピース。

週末は雨。街暮らしの新習慣に、天気予報のチェックが加わった。リュックのポケットには、いかにも機能的な顔をした真っ黒なUV対応の傘が、すっぽり収まった。