もめのめも書き

日常のエッセイ、仕事の記録など。

〔読書〕南部鉄器でお茶、淹れる。

名字が四回変わった女の子が主人公の小説を読んだ。生みの親から順番に、その時々の理由から、結果的に血の繋がらない親をリレーされる話。

 

そして、バトンは渡された

そして、バトンは渡された

 

 

そのあらすじから、悲劇を想像してしまいそうだが、喜びと悲しみが適度にある、きちんと日常を積み重ねた物語で、穏やかな感情が残った。物語の締めくくりが、とても良かった。今までのバトンが繋がった「家族」が一堂に会したシーン。今のところ一般的な姿ではないけれど、ファンタジーではないと思った。

 

「家族」という言葉が指す範囲は様々。血が繋がっていることなのか、一つ屋根の下で暮らしていることなのか、戸籍を同一とすることなのか、それとも。

 

苦しみの大半は、「世間の定義」と「自分の本音」とのズレによって生み出されていると思う。世間に心配されたり糾弾されるようなことがなければ、「自分の本音」通りに、喜んだりすることが、もっと自由になるだろう。悲しむことも、もちろん。

 

学生時代に行った、京都にある何必館(かひつかん)という美術館の言葉が、今もずっと胸にある。

 

「人は定説にしばられる。学問でも、芸術でも人は定説にしばられ自由を失ってしまう。定説を『何ぞ必ずしも」と疑う自由な精神を持ち続けたい」

 

本を最後まで読み切って、一人分のお茶を、お気に入りの器に注ぎ入れた。

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