もめのめも書き

日常のエッセイ、仕事の記録など。

運命の台湾。

台湾人の友達がいる。彼女との出会いは、ちょっとだけドラマチック。

 

数年前、私は岡山の田舎のゲストハウスにて住み込みで働いていた。

産まれたばかりみたいな幼子を育てながらで、

心身共に詰まり切って負のオーラを纏う私をどこかに放牧し、

成長して欲しかったのだろう、「海外へ一人旅に行きなさい」と

当時の夫や、共に働いていたメンバーから課題を出された。

 

その時選んだのが、台湾だった。

正直、旅に行きたくなかったし、

「ゲストハウスと家族が自分のすべて」と思い込んでいたので、

その場を離れることが不安で仕方なかった。

そのため、期間は2泊3日と自分で決めた。

(もっと行ってきていいと言われたのに)

 

興味があるとすれば、アート、美味しいご飯、オシャレなお店。

2泊で行けるご飯の美味しそうな場所という理由で台北を選んだ。

 

山口県の萩で同じくゲストハウスを営んでいる知り合いに、

一つのゲストハウスを紹介してもらった。

台北の北投という温泉があるエリアで、

一度廃業した旅館をアートの手法も借りながら再生したゲストハウスだという。

私が働いていたのも同じく、一度廃業した温泉施設を再生した場所だったので、

このゲストハウスを旅の最終目的地とした。忘れていたが、私は温泉も大好きだ。

 

北投の駅に着いたものの、スマホはネット環境になく、

まともな地図を持ってくるのを忘れたので、道に迷いに迷った。

スクーターを押したおばさんが私が道に迷っていることに気づき、

中国語か台湾語で勢いよく話かけてきた。

全然分からなかったが、困っていることと助けたいという気持ちは、

瞬間的に通じ合った。

おばさんが近くにいた男性2人に声を掛け、

3人がかりで、私をゲストハウスまで案内してくれた。

 

 

そこのゲストハウスで働いていたのが、冒頭の友人だ。

日本が大好きで何度も日本に来ているという。

温泉みたいな温度の人柄の彼女に、

思わず「岡山のゲストハウスに来てよ!」と口走った。

彼女は友達を連れて、本当にその3ヶ月後くらいに

1ヶ月間ヘルパーとしてやって来た。

濃密な日々を過ごした後、台北に一度帰り、

その数ヶ月後からは、ワーキングホリデーの制度を使って

1年間スタッフとして働いた。

温泉に浸かりながら、互いにこれからの人生をどうしようかとよく話した。

 

彼女のワーキングホリデーの1年間が終わる頃、私もゲストハウスを卒業し、同時に送別会を開いてもらった。

 

北投のゲストハウスのWebサイトには、英語と日本語訳でこのように書いている。

“To lose one’s way is to begin a journey. ” 

英語には疎いのだけれど、「道に迷うことは旅の始まり」と書いているのだろうか。

ゲストハウスの日本語訳には「失うことは旅の始まり。」と書いている。

 

どちらにしても、私の旅のキャプションにぴったりだ。 

 

台湾での一人旅は、人生の一人旅のスタート地点だったと振り返って思う。

「自分にはゲストハウスと家族しかない」という思い込みを抱えて旅に出て、

道に迷いたどり着いたゲストハウス。

様々な想いから一度すべてを失って、自分を立て直すための。

無理やりでも旅に出してもらって良かった。

 

先日、台湾に彼女を訪ねた。

彼女のおばあちゃんの手作りの台湾料理を大量にご馳走になった。

岡山のゲストハウスはキャパが30人くらいなのに、

彼女の親族だけで満室になったことがある。

その時泊まっていた幼い子たちがわざわざ会いに来てくれたりした。

私が分からないことはおかまいなしに、中国語(か台湾語)で、

勢いよく話しかけてくるおばあちゃんたちは、

あの日私をゲストハウスに導いてくれたスクーターのおばちゃんの姿と重なった。

 

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