その手から生まれるごはんは、素材が嬉しそうにしている。
料理というより、ごはんと呼びたい、日常の穏やかな喜び。
この人を普段の暮らしの中で感じたいと思い、少しだけ山の、まちへと行った。
雑誌に出てくるようなインテリアに囲まれた暮らしを想像していたけれど、自分の内なる喜びに素直な、全く気取っていない、その人そのものの空気と光があった。
ごくごく自然に出てきたチャイ、冷蔵庫に残っていた何品かのおかず、夫婦がつくったお米、友達がつくってきたといううどんをいただきながら、予定以上にずっと同じ場所に座って、話をずっとしていた。ごはんと光が優しくて、永遠にそこに居られそうだった。ごはんは、つくる人を本当によく写す。
山の中を歩きながら、とても自然に、足元の恵みを採っていく。
大きな葉っぱの三つ葉、細長い破竹、にょきっと伸びたわらび。
「はい」と、手渡された山の恵みは、自分の家に帰って、天ぷらやタイカレーの具材にしていただいた。
わらびのアクは、灰や重曹がなくても、小麦粉と塩があればできた。
なんだ簡単じゃないか。
冷蔵庫に忍ばせといて、今度何にしよう。ナムルが食べたいかも。
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