もめのめも書き

日常のエッセイ、仕事の記録など。

祖母の寸景。

世界中、旅をした祖母。旅の記録は、スケッチブックに丁寧にまとめていた。スナップ写真、道端のスケッチ、レストランから持ち帰ったコースター。祖母の目を通すと、日常的な風景は、穏やかなスポットライトが当たり、生き生きと踊りだす。

 

90歳を迎えるまで働き、一人で旅をした。94歳の今、生まれ育った神戸の街が一望出来る山の上のケアホームで過ごしている。この日は、台風が訪れる前。海の向こうまで、はっきりと見渡せた。 

 

「世界中旅をしたけれど、神戸は本当に良い街」。

 

部屋の棚には、何十年の間に集まった旅の欠片とともに、旅先で撮った自らの写真、数冊の本。「世界の露店」「シチリアへ行きたい」など、祖母らしいセレクション。

 

山の木に鳥が留まり、また離れていく様子を、飽きることなく見つめる祖母の横顔は、相変わらず美しかった。

 

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